ドンキーコングバナンザが令和のグレンラガンだった件(レビュー)

■Switch2ソフトとして発売された「ドンキーコングバナンザ」を遊んだためレビューを書いておこうと思います。
まず第一に、とてもおもしろい!
「壊す」ということに視点が置かれたゲームで、爽快な「破壊」をあの手この手で提供してくれる。
■特にそれを爽快なものにしてくれているのが「音」。
その中でも強く印象に残ったのが、ガラスやクリスタルを割ったときのような音である。
ガラス・クリスタルを壊したような音が複数種類オブジェクトによって用意されており、
爽快な破砕音・破裂音が、飽きさせないように押し寄せてくる。
もちろんガラスの破壊音以外も様々あるのだが、ゲーム序盤から終盤まで、徹頭徹尾至る所で印象に残ったのはやはりガラス音である。
マリオシリーズでいうところの、コインの獲得音のようなものの代替として、ガラス音がゲーム体験の隣に常にあったように感じた。
個人的になんかすごいなと思ったのが、
ガラス音も、現実で花瓶を割ってしまった、窓ガラスを誤って割ってしまったかのような「しまった…」という感覚がなく、
風鈴が鳴るような、心地よい破裂音となっている。
そう、ガラスを割ってるというよりも、風鈴を鳴らしているのが感覚として近いかもしれない。
一つガラス音にしても、どのようなものが心地よいゲーム体験となるかを練りに練ったのだろうというのを感じた。とてもこだわりを感じた。
また、このゲーム特徴の、ドンキーコングが変身するバナンザ状態についても、「音」が良い。
変身中はBGMが変化し、その変身形態によって異なるものが用意されている。
これがとてもノリノリの良いBGMと感じた。
なんとなく任天堂のBGMというと、声・コーラスはなく、あくまで楽器・電子楽器で構成された音という印象を持っている。
だが、ペルソナシリーズのように、歌をメインに置いたようなBGMで、ノリ良く耳に残る。
Nintendo Musicで早く聞けるようにしてほしいと感じた。
※これは実際は事実と違うだろう。私の古いゲーム体験が、そう感じさせているだけである。ゲームボーイなどの印象が強くこびりついているだけなのだ。なぜなら、スプラトゥーンやDS以降のファイアーエムブレムなど、現代のゲームでは声・コーラス入の人気BGMが多い。完全に私個人の感覚の問題なのだ。
■音以外でも凄さを感じたのが、コントローラーの振動である。
本作はSwitch2ソフトのため、HD振動2である。
このHD振動2が、明らかに旧Switchと異なる。
とくに感じるのが、強い振動ではなく、弱い振動、それも、微妙な振動である。
「弱い」振動の振れ幅がとても大きく、微細な振動は、本当に微細である。
硬い地面を、素足のドンキーコングが歩く微妙な振動が、手に伝わってくるのである。
これは、破壊のときのフィードバックとしても、気持ちよさ増幅に寄与していると感じた。
比較対象がいまのところマリオカートワールドしか無いが、
「Switch2のHD振動2はすごいぞ!」と感じさせてくれる、まるでフラグシップのような作品と感じた。
だが一方で、あまりに微妙な振動も表現しすぎて、少し気持ち悪さも感じた。
要所要所、「ここぞ」という場面での強い振動はプレイヤーのゲーム体験を強めてくれるが、
HD振動2の性能を見せたいがためか、常にどのような場面でも振動が来るような状態で、
なんというか落ち着きが無い。メリハリが無いといえるかもしれない。
たしかに技術の進歩はすごいが、それをいたずらに使えるだけ使えば良いというのは違うのだ、
と個人的な学びとなった。
■さて、音や振動に触れたが、やはり大切なのはゲーム画面内での動きである。
今作は、ともかく「壊せる」。
ゼルダの伝説ブレスオブザワイルドでは「プレイヤーがしたいことが、実現できる」という強みがあったが、
それと同様「プレイヤーがしたいことが、思った通りの破壊で実現できる」という感覚であった。
下に行きたいと思えば地面を破壊して進めるし、前に進みたいけど壁があって邪魔と思えば破壊して進める。
ブレスオブザワイルドの場合は、前に進みたいが高い壁がある、という場合はその壁をよじ登って進むという力技での欲求の満たし方があったが、
バナンザの場合、登るとかダルいこと言ってないで、目の間の壁を壊して進んじゃえばいいじゃん、なのである。
下に行くために、洞窟の穴を探して道に沿って進む、では無いのである、穴を掘ってまっすぐ最短距離で進んじゃえばいいのである。
その力技をドンキーコングは実現してくれる。しかも爽快に。
さながらそのゲーム体験は、「天元突破グレンラガン」である。
「壁があるなら殴って壊す、道がなければこの手で創る」を地で行くのだ、DKは。
山があるので迂回、道がうねっているので曲がる、とかそれに従うのではなく、「オレの進む道が、道なのだ」。
ドンキーコングが「オレのパンチは天を突くパンチだ」とか言い始めても、違和感ない。
単に破壊するという気持ちよさもあるが、
プレイヤーの「こうしたい」を破壊によって実現できるという欲求の満たし方が、
このゲームの良さと感じた。
■いったんゲームクリアまで遊んだが、ストーリー、展開、ゲーム体験、ボリュームなど、どれもとても良いゲームだった。
難易度も、マリオ系と比べ良い意味で快適で、不条理な難しさ、キャラクターコントロールが優れてないとクリアできない、という感じでないところも良かった。
オープンワールド系のゲームであるが、マリオオデッセイよりもブレスオブザワイルドに近しいタイプと個人的に感じた。
本来であればマリオオデッセイのほうが近しいはずなのだが(開発スタッフもマリオオデッセイと同じとのことなので)。
おそらく、バナンザの攻略の仕方が「どうすればこれをクリアできるだろうか」というときに、
ブレスオブザワイルドと同じように、頭を捻ってパズルのようにクリアするところからそう感じたのだろう。
個人的なところなので人によって解釈が違うことは重々承知だが、
マリオオデッセイの「難しい」は、コントローラー操作の難しさと感じた。
少しミスれば床から落ちる、一つ台から落ちたら、下から一つ一つやり直し、というようなイメージだ。
一方で、ブレスオブザワイルドとドンキーコングの難しさは、「どうすればクリアできるか」を頭を捻って考えるものと感じた。
単にコントローラー操作の難しさでは無いから、ゲームに多少不慣れな人でも、頭をひねればクリアできる。
個人的に、そこがとても良いと感じた。
頭さえひねれば、パズルのようにクリアできる。
また、良い意味でズルできてしまう。シビアなコントローラー操作がいらない。
「難しさ」の基本ベクトルが違うのだ。
ともかく、とてもおもしろいゲームである。
現在だと、まずはSwitch2を入手することが最大の障壁だが、手に入れた暁には、ぜひバナンザを体験してほしい!